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チューリップモドキ (超短編)

 埋めた覚えもないのに、チューリップらしき芽が三つ庭の真ん中に出ていた。これから夏を迎えるというのに誰の仕業なのかと家じゅう聞きまわったら、庭に出てきた祖母が「ああ、これはチューリップもどきだね」と言った。たっぷり水をあげて育てればおもしろいものが見れるよと、意味ありげに笑う。

 それから毎朝水をやるのが日課になった。芽は順調に伸びてきたが、日当たりに恵まれているにもかかわらず、真っ黄色になってしまった。数日たつと成長が止まり、その芽を押し上げるように土から白くて丸いものが突き出てきた。それはカビのようなほわほわしたものに包まれている。とんでもないことになっているのではないかと祖母に相談したが、一目見て「順調、順調」とすぐに去ってしまった。

 三日後、水やりをしている時に三つの芽がぱくりと割れてギョエーと鳴いた。私の悲鳴で家族が出てくる。泣きそうな顔で私は祖母に説明を求めた。

「鳥だよ。土から生えてくる珍しい種類でね。ここに目があるだろう」祖母の指さすところに、黒い虫のようなものが二つギョロギョロと動いている。

 まだ体ができていないから引っこ抜くなと言われた。完全な鳥になるまで三ヶ月はかかるらしい。夜明けとともに彼らは鳴き始める。私は毎日びくびくしながら水をやった。首が伸びてくるとぶんぶん振りまわして不気味に鳴いた。庭の中央に鳥の首が生えている光景は異様だ。

 学校が夏休みに入ったころ、ようやく祖母が動いた。腕まくりをし、野菜を収穫するかのように鳥の首を両手でつかむ。揺り動かしながらひっぱると、土の中から胴体が出てきた。鳥の翼には美しい赤い模様があった。広げるとまるで花のように見える。一羽だけ私もなんとか引き抜き、祖母の真似をして首を持ったまま軽く振って土を落とし、そのまま空へ振り上げた。花が散るときのようなあっけなさで三羽はそろって青空へ高く飛んでいった。

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世界で一番明るい町 (超短編)

 カメラを買ったので、世界で一番明るい町に行くことにした。飛行機で十二時間。半島の先っぽにあるとても小さな町。

 積み木で作ったような単純な町並み。バニラやストロベリー、ペパーミントのアイスのようなカラフルな壁には、美しい模様の装飾タイルがアクセントにはめ込まれていた。にぎやかな色彩で絵付けされた陶器がこの町の名産品なのだ。

 もうひとつ名物がある。ぴっかり禿げ上がった男性の頭だ。町中の禿げ頭にはみんな、陶器と同じような美しい模様がペイントされていた。カメラを向けると、そろって自慢の頭を見せてくれる。町には禿頭専門の絵付師がいるお店があった。このペイントは、自然に禿げた頭にしか許されないらしい。特別なオシャレなのだ。

 たっぷりの日差しの中、派手な頭でおじいさんが歌をうたいステップを踏む。それを見てみんなが楽しそうに笑っている。おなじような光景をいくつも見た。

 わたしはひとつずつ模様のちがう頭をいっぱい撮って帰国した。まぶしい禿げ頭の写真を眺めていると、ふつふつとあの町にいた時の楽しい気分がわきあがってくる。

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