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パール (超短編)

 しゃん。しゃん。しゃん。

 霧雨が降る夜に、鈴の音が等間隔に響く。

 森から続く道。鈴を鳴らす少年の後ろを、うさぎの着ぐるみをかぶった幼い少女たちがついていく。彼女たちが持つランタンが、暗い夜道を照らしていた。

 道の先に、その一帯だけやわらかな光に満ちている場所があった。彼らはそこへ向かっている。

 光源は花だった。道の両脇に並ぶ木に、和紙で作ったような白い花がぎっしり咲いている。その花が内側から光って、まるでシャンデリアのようだった。

 鈴が鳴りやむと、うさぎの少女たちも立ち止まった。彼らはそろって空を見上げる。

 霧雨に混ざって、空から大粒の雫がゆっくりと、螺旋階段を転がるように落ちてきた。近づくにつれ、雫は花の灯りを吸って白く発光していく。地面にぶつかるとコツンと硬い音がして、彼らの足元に転がった。雫はいくつも落ちてくる。

 うさぎの少女たちは、丸いしっぽを左右に振りながら、散らばる白い雫を拾っておなかのポケットに集めた。霧雨がやみ、落ちてきた雫を拾い集め終わると、少年が鈴を鳴らした。少女たちは急いで整列する。

 しゃん。しゃん。しゃん。

 少年を先頭にして、来たときと同じように彼らは森に帰っていった。

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純愛 (超短編)

 彼女が不治の病にならないかな。

 そしたら、僕は仕事なんかほったらかして、朝も夜も彼女のそばにいて、永遠の愛を誓って、でも彼女が死んじゃった数年後に違う女の人と出会ってしまって、罪悪感にさいなまれてみるのに。

 僕たちがケンカばかりするのは、彼女が健康すぎるからなんだ。

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守り神 (超短編)

 ある日、蛸が家にやってきたのだそうだ。
「玄関の門柱にのってたの。にょろんと」
 はじめて彼女の家に遊びに行ったとき、玄関の引き戸についているへんてこな飾りに見入っていると、彼女が話してくれた。
「その蛸が『先日のお礼に参りました。私を飯田家の守り神にしてください』って言ってね」
 ちょうど日曜日だったので家族全員そろっており、その場で会議が開かれたのだが、誰一人、最近蛸にかかわった記憶がなかったので、祖父が代表して、何かの間違いではないかと蛸に話してみた。が、頑固な蛸は私が間違うわけがないと言ってきかない。
「もう全然話にならないから、玄関の戸をピシャって閉めてやったの。そしたら蛸が戸にはりついちゃって、そのまま守り神になっちゃったのよね」
「守り神なんだ、これ」
 蛸と言われれば蛸にしか見えなくなったへんてこな飾りに僕は顔を近づける。
「うん。まあ自称だけど。あとで分かったことなんだけど、この蛸を助けたのは、向こうの筋の山田さん家のおばあちゃんだったらしいのよ。でも判明したときにはもう吸盤が取れなかったの。それが十五年前のこと」
 かわいい話でしょ、と彼女は守り神の丸い部分をなでまわした。僕は神様に手を合わせてから、彼女の家に入った。

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