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2016年12月

2016年12月30日 (金)

大掃除(超短編)

 いらないモノをどんどん捨てる。今年一年着なかった服。なくても困らないモノ。他の何かで代用できるモノ。ゴミ袋はいっぱいになり、部屋はすっきりして、気持ちも軽くなる。

 広くなった床に掃除機をかける。さっぱりした部屋は清々しい。達成感のなか、一息つこうとソファに座ると、床に落ちている髪の毛が目に入った。たった今掃除機をかけたばかりなのに!! どうして髪の毛ってあちこちで抜け落ちるんだろう。生えているから抜けるわけで、そもそも必要なんだろうか。なくても困らないんじゃないかしら。

 思い切って坊主にした。

 満足すると、今度は伸びた爪が気になった。伸びるから切ってゴミになるわけで、そもそも必要なんだろうか。なくても困らないんじゃ……と思ったけど、爪の役割についてテレビで観たことがあるのを思い出し、剥ぐのはやめた。

 でも何かを捨てたくてたまらない。小指一本ならなくても困らない気がする。自分で落としちゃう人もいるし。耳っているのだろうか。なかったら聞こえにくいのかな。左腕は右腕で代用できるのでは。ああ、食事も。食べるからゴミとかいろいろ発生するわけで、何も食べずに生きられたらどれだけ無駄が省けるだろう。私の周りはなくても困らないものばかりだ。どんどん、どんどん捨てられる。本当に必要なモノってなんだろう。あれもこれも、存在するから煩わされるモノばかり。

 ああ。そもそも私のそ……

 

 

 そこで思考がぴたりと停止した。危険だ。それ以上は考えてはダメだ。踏み込んではいけない。本能が働いた。

 私は大きく深呼吸した。ゴミ袋を手に取り、ひとつひとつ元の位置に、明け方まで時間をかけて戻した。そしてウィッグを買いにデパートに行った。

 

 大掃除をする前と同じ状態の部屋で、何も変わらない私のまま、新年を迎える。

2016年12月27日 (火)

イルミネーション(超短編)

 まるで海の底のよう。

 春には薄いピンクの桜雨を降らせていた並木道が、今は凍える空気の中で青い静かな光に満たされている。海底のような深い青。木々の間をきらめくサカナが遊ぶように泳ぐ。

 光があふれ、圧倒的に美しい光景は胸に痛い。

 何をしても埋まらないからっぽの体に、あまりにも清らかな光が滲入してくるからか。

 絶望がいつもそばにいる。

 泣きそうになるのはそのせいか。

 視界を花びらが覆う。いつか、吹雪みたいと笑ってつないだ手の温度がよみがえる。

 ふっと、胸を満たす青い光がわずかな熱を帯びた。

 いつまでもふさがらない切り傷のような記憶が、抜けない刺のような言葉が、ほんの少し溶けてやわらかな光となる。消えない痛みは雪のように儚くあたりに漂いこの光景の一部となる。スノードームのような完成された世界で、青い光はより美しさを増していく。

 

 銀色のサカナがあなたの肩をかすめて消える。

2016年12月24日 (土)

クリスマス(超短編)

サンタクロースになると言って父がフィンランドに旅立ったのは十年前。

 それからクリスマスの夜にだけ父は帰ってくる。その日の母はたっぷりのごちそうを作り、念入りに化粧をし、新しい服を着て、落ち着きなく家の中を歩きまわって待っている。

 食卓に並べられたものはどれもクリスマスらしくない。お寿司、お好み焼き、おでん、かぼちゃの煮物、おみそ汁、そして父の大好きな甘い甘い卵焼き。

 真夜中、マンションのベランダに真っ赤な服を着た父が現れる。白いひげで顔の半分は隠れているが、間違いなく父だ。

「メリー、クリスマース!!」

 陽気な声で入ってきた父を母はすぐに食卓につかせ、次から次へと料理をすすめる。炊きたてのごはんを出し、おみそ汁を温めなおしたりと、食卓と台所を何往復もする。少しでも父を引きとめようとしているのだ。

 せまいベランダで窮屈そうにトナカイが待っている。まだまだ仕事の途中だからと、席を立とうとする父を無理やり座らせ、母はお茶漬けや熱い緑茶を入れる。

 背負っている白い袋以上におなかが膨らんだ頃、もう子供じゃない私と母にプレゼントを渡して、父は重い足取りでベランダに向かった。トナカイたちは迷惑そうな顔で重量オーバーになったソリをひいてよろよろと空にのぼっていく。

2016年12月19日 (月)

秘密(超短編)

ベランダに、四本指の白い大きな手袋が干してある。

2016年12月18日 (日)

センチメンタル(超短編)

 想像もできないけれど、おじいちゃんが子供のころは流れ星を見ると願い事を三回唱えていたらしい。星は決まった位置があって、つなげて動物や何かに見立てて星座っていう名前をつけていたという。一番信じられないのは、都会ではほとんど星が見えなかったってことだ。

 人工的に星を打ち上げ空にバラまくようになって、流れ星なんか当たり前に降るようになり、うるさいぐらいの満天の星に規則性はなくなった。地上のビル群も頭上に広がる夜空も、見渡す限り光の粒があふれていて、こんな夜を知ってしまったらもう真っ暗な夜空の世界には戻れない。

 人工の星で夜はずいぶん賑やかになった。

 だからもう、真夜中に発作的な孤独に押しつぶされそうになることもなければ、理由の分からない涙が勝手に流れることもないし、人恋しくなって恋人に無茶な電話をかけることもない。

 
まばゆい夜を手に入れた僕たちは、代わりに感情をひとつ手放したのかもしれない。

お久しぶりです

しばらくほったらかしにしていたブログを復活させてみました。
10年ぐらい経ってるかと思ってたのですが、前の投稿を見たら5年前でした。そっか。5年か。そっか。

いろいろあったりなかったりして、ここ数年、文章を書くことから離れていたのですが、そしてもう書かないだろうなと思ってたのですが、

今年(2016年)に入ってちょっとずつ気持ちが変わってきて、そのタイミングで夢のようなお話をいただいたり、仕事が楽になって時間に余裕ができたりして、また超短編を書きたいなと思うようになれました。

文章を書いていなかった間、ほとんどパソコンを立ち上げることがなかったので(iPodに曲を入れる時ぐらい・・・)、いただいたメールに数か月気づかないこともしばしばで、いろんな方に不義理なことをしています。本当にごめんなさい。



そんなこんなで現在リハビリ中ですが、ポチポチ作品を書いていきたいなと思っているので、よろしくお願いします。

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