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2017年1月28日 (土)

白い森(超短編)

 夜明けの空のように不純物のない冷たい風が森を巡る。絡まる枝から熱帯魚が気まぐれにあらわれ、それは毒ガエルのような鮮やかさで森に色を加えていた。やわらかく輝く珪砂の地面、様々な花をつける下草の中で、数多の命が戯れている。空から突き刺さる光の矢。いくつもの輪が重なり、広がり、広がり、揺れて、この世界のすみずみに行き渡るように。来訪者をからかうようにリスが隠れ、水のように満ちる祝福の歌声に合わせて子鹿が跳ねる。

 終焉のはじまりは足音もなく近づき、可視化したときにはもう手立てがない。透明な炎が森を殺す。勢いは止まらず白い死が雪のように積もっていく。太陽光をふさぐ空からの視線は己が神ではないことを思い知った。熱波がすべてを覆い尽くす。帰る場所を失った瑠璃色の蝶たちがさまよい泳ぐ。傍観者たちはただ嵐の到来を待った。無音のまま死滅していく世界で僅かに残った色に触れるのは、祈りの指先。

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