無料ブログはココログ

« 2017年1月 | トップページ | 2017年5月 »

2017年2月

2017年2月12日 (日)

Bon voyage (超短編)

 黄色い車で高速を走る。空は湖みたいに青く深く透き通って光っている。ここが晴れてたって仕方ないけど、でも最っ高のバカンス日和だ。

 突然鳴り響くファンファーレにびっくりして窓の方を見ると、右手に見える工業地帯の煙突から大群の渡り鳥が次々に吐き出されていた。それは瞬く間に空の高い場所に広がって、自由に羽ばたいたかと思うと、みるみる隊列を組んでちゃんと渡り鳥になる。初めて見た。当たり前にある世界は誰かがこうやって作ってるんだ。平日は下ばっかり見てるから気づかないだけ。

 遠ざかる書類の山にざまあみろって笑って、シュレッダーの紙屑が町中に雪になって舞えばいい。懐かしい曲をみんなで歌えばもうすぐビルの向こうに海が出てくるから。

 やっぱり新しい水着を買えばよかったなって、飛行機の腹を見上げながらちょっとだけ後悔してる。

 

2017年2月 5日 (日)

「P」について

ひさしぶりに、『500文字の心臓』の競作に参加しました。
出来は、まあともかく、楽しかった。お帰りって空虹さんに言ってもらえて嬉しかったです。っていうのはきっと『500文字の心臓』の掲示板に書くべきでしょうが、いまだに掲示板に書き込むタイミングが分からない。日常でもそれなりの人数で話している時はいつ発言をしていいか分からない。大なわとびの入るタイミングも分からない子だったな。タイミングって考えれば考えるほど見失うものなので、今後も運転免許は取らないでおこうと思います。
空虹さん、ありがとうございました。



「P」について

ただの言葉遊びの話です。
無自覚にPを拾いまくっている男の子と、
香水(P)に腹を立てているので、意図的にPで追いつめている女の子。
「平和」「完璧」「真珠」「無表情」とかもPのつもりでした。英語が苦手なので「P」じゃねえよっていうご意見には前のめりで謝ります。

パンケーキ屋さんに行きたがって、ピンクのセーターなんか着てしまう女の子が、感情的ではなく謎の言葉で淡々と責めてくるのって、めっちゃ怖いと思うんやけどな。

気に入っている話なので、手直ししていつか再生させたいと思います。

P (超短編)

 パンケーキ屋は平和だ。壁にはサヴィニャックのエッフェル塔のポスター。窓から入る冬の日差しがテーブルにプリズムを落としている。

「いい匂いね」

 ピンク色のセーターを着た彼女が完璧な笑顔で僕に言う。ゆるいパーマの髪からのぞく真珠のピアスは、先月の誕生日に僕があげたものだ。彼女のパンケーキはなかなか来ない。僕は気持ちを落ち着かせるためにペリエを一口飲む。

「Pばっかり」

 唐突な彼女の言葉にうまく反応ができなかった。かまわず彼女は歌うように続ける。

「PはピストルのP」

 思わず息を止めて彼女の顔を見た。見事な無表情。僕の心臓が早鐘を打つ。

「プレゼントはピストルがいいわ」

 何のプレゼント? とは恐ろしくて聞けなかった。待ち合わせの時からそんな気はしてたのだ。やっぱりばれている。

「……そんなもの、どうするの?」

「ポケットに入れておくのよ。お守りがわりに」

 射貫くように僕を見てくる。口の中が乾く。ペリエの瓶に手を伸ばすが、口に運ぶことができない。

「気づいてる? いい匂いね、その香水」

 無表情のまま、彼女の口の端が美しく上がる。

 完全に撃ち抜かれた僕は、ただただ彼女のパンケーキが運ばれてくるのを待っている。

« 2017年1月 | トップページ | 2017年5月 »

最近のトラックバック

2020年5月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31