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2017年2月 5日 (日)

P (超短編)

 パンケーキ屋は平和だ。壁にはサヴィニャックのエッフェル塔のポスター。窓から入る冬の日差しがテーブルにプリズムを落としている。

「いい匂いね」

 ピンク色のセーターを着た彼女が完璧な笑顔で僕に言う。ゆるいパーマの髪からのぞく真珠のピアスは、先月の誕生日に僕があげたものだ。彼女のパンケーキはなかなか来ない。僕は気持ちを落ち着かせるためにペリエを一口飲む。

「Pばっかり」

 唐突な彼女の言葉にうまく反応ができなかった。かまわず彼女は歌うように続ける。

「PはピストルのP」

 思わず息を止めて彼女の顔を見た。見事な無表情。僕の心臓が早鐘を打つ。

「プレゼントはピストルがいいわ」

 何のプレゼント? とは恐ろしくて聞けなかった。待ち合わせの時からそんな気はしてたのだ。やっぱりばれている。

「……そんなもの、どうするの?」

「ポケットに入れておくのよ。お守りがわりに」

 射貫くように僕を見てくる。口の中が乾く。ペリエの瓶に手を伸ばすが、口に運ぶことができない。

「気づいてる? いい匂いね、その香水」

 無表情のまま、彼女の口の端が美しく上がる。

 完全に撃ち抜かれた僕は、ただただ彼女のパンケーキが運ばれてくるのを待っている。

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